この記事は、島袋全優『腸よ鼻よ』をネタバレ無しで紹介。難病の闘病記でありながら、ユーモアと温かい筆致で読者の心を軽くする、明るいエッセイ漫画の魅力をまとめた。
はじめに
作品紹介の投稿記事、副題として「好きな作品の話」をつけている。
はたしてこの話に、その語調があうのか、少し疑問がある。
「腸よ鼻よ」は、作者自身の闘病体験を綴った闘病記である。
難病に向き合う作者の気持ちを思うと、普段のトーンのタイトルのままでよいのか、
という心配な気持ちが、一切わかない明るいトーンの作品である。
苦しみを笑いに変える、不思議な読後感の理由
難病となった作者・島袋全優さんの実体験をもとに描かれた『腸よ鼻よ』。
重いテーマを扱いながらも、驚くほど軽やかに読み進められるエッセイ漫画である。
本来なら深刻になりがちな場面が、作者のユーモアと独特のタッチによって、
読者の心に負担をかけない形へと変換されている。
これは、作者の画力の力に他ならないと考える。
治療と仕事の両立
漫画家としての仕事と治療の両立は、決して簡単ではない。
体調を崩しては入院し、回復してはまた描き始め、そして再び悪化する――。
その繰り返しは、読者が想像する以上に過酷なものだろう。
本来なら重く沈むはずの現実が、島袋さんの手にかかると、なぜか前向きな力として伝わってくる。
原因不明
原因がわからず苦悩するはずの場面も、
病院を転々とする診察の描写も、
根本的な治療に踏み込む過程も、
本来なら読者の心を締めつけるはずだ。
しかし『腸よ鼻よ』では、そのすべてが軽やかに読み進められてしまう。
深刻さを“軽く扱う”のではなく、“軽く読める形に変換している”と言ったほうが近い。
そして不思議なことに、その軽さは読者に罪悪感を抱かせない。
作者自身が痛みの中心にいるにもかかわらず、読者の心の負担を先に取り除いてくれているような感覚がある。
苦しんでいるのは作者なのに、救われているのは読者のほう――この逆転こそが、本作の大きな魅力だ。
読者から作者へ、そして読者へ
読者は、読むことで作者を応援しているのだと、どこかで思い込もうとする。
けれど実際には、つらさを笑いに変えて差し出してくれる作者のほうが、読者の心を軽くしてくれている。
応援しているつもりで、救われているのは自分なのだと気づく瞬間がある。
『腸よ鼻よ』は、難病という重いテーマを扱いながらも、読者に前向きな力を残してくれる稀有な作品である。
島袋全優さんの視点が、痛みを知っている人にしか描けない優しさを帯びているからこそ、
この軽やかさが成立しているのだろう。
書籍情報
書籍情報
- タイトル:腸よ鼻よ
- 著者:島袋 全優
- 出版社:KADOKAWA
- レーベル:ビームコミックス
- 刊行期間:2018年〜2023年
- 巻数:全10巻(完結)
- ジャンル:エッセイ漫画・闘病記
作者自身が患った難病・潰瘍性大腸炎の闘病体験を、
ユーモアと温かい視点で描いたエッセイ漫画。
重いテーマでありながら、読後感は驚くほど軽やかで前向き。
10巻で物語は完結している。
著者情報
島袋 全優(しまぶくろ ぜんゆう)
漫画家。沖縄県出身。
自身の闘病経験をもとにしたエッセイ漫画『腸よ鼻よ』で注目を集める。
明るくユーモラスな作風と、重いテーマを軽やかに描く筆致が特徴。
SNSでも日常の出来事や創作の裏側を発信しており、
作品の雰囲気そのままの温かい人柄が読者から支持されている。
