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はじめに

「[W]ウォン」 たがみよしひさ著|好きな作品の話

この記事は、短編漫画「ウォン」をネタバレ無しで紹介。ビリヤードの静けさと、Shot.1〜13で描かれる心の揺れを丁寧にまとめた、たがみよしひさ作品の魅力を解説。


はじめに

作者である「たがみよしひさ」は、代表作となる長編漫画の他にも、
多くの短編漫画を発表している。

SF・ミステリー・青春群像など、作品ごとに独自の世界を展開する作者が、
ビリヤードを題材とした短編漫画を描いているのが「ウォン」である。


作品について

「ウォン」は、ビリヤードを題材(舞台)とした、たがみよしひさによる短編である。
たがみ作品といえば、軽妙な掛け合いやテンポの良い展開が印象的だが、
この短編は少し趣が異なる。

物語の始まりから終わりまでが一本の線でつながり、
読み終えたあとに静かな余韻が残る。
短編ならではの密度と静けさが心地よい作品である。


Shot.1〜Shot.13 が示す“物語の呼吸”

作品の目次には、以下の13のショットが並ぶ。

Shot.1 ブレイク・ショット
Shot.2 キス・ショット
Shot.3 キャノン・ショット
Shot.4 フォーム
Shot.5 イマジナリー・ポイント
Shot.6 イングリッシュ
Shot.7 マッセのボニー
Shot.8 ガラスの肘
Shot.9 ストッパー・ジェミニ
Shot.10 J・B・コップ
Shot.11 キング・オブ・ハスラー
Shot.12 ラスト・ゲーム
Shot.13 ウォン

全13話。
一話完結のように進む物語が、終盤へと緩やかにつながっていく。

シンプルな各話のタイトルは、
ビリヤードという競技の流れをそのまま写し取ったような静けさを持っている。

短編ゆえに語りすぎることはできないが、
この目次の並び方だけで、作品の“呼吸”のようなものが伝わってくる。


ビリヤードという題材の静けさ

ビリヤードは、漫画で描くには難しい競技だ。
派手な動きよりも、構え、間合い、集中、
そして一打の結果を静かに待つ時間が重要になる。

「ウォン」では、その静けさが短編の密度とよく馴染んでいる。
たがみよしひさの画力と構成力が、
競技の“間”を丁寧にすくい取っているように思える。


物語の魅力

ビリヤードは題材であり、舞台である。
技術や駆け引きが主役ではない。

この短編の中心にあるのは、
登場人物の心の揺れや、選択の重さを静かに描いた“人の物語”である。

Shot.1 から Shot.13 へと進むにつれ、
技名の変化の裏側に、人物の心情が少しずつ滲んでいく。
その変化は大きく語られないが、
短編だからこそ描ける“見えない心の動き”が、
終盤へと静かにつながっていく。

しずかな物語である。
その静けさが、読後の余韻として長く残る。


書籍情報

[W]ウォン

著者:たがみ よしひさ
出版社:秋田書店
発売日:1988年7月1日
形式:単行本
ページ数:291ページ
ISBN-13:978-4253102124


著者情報

たがみよしひさ

1958年生まれ、長野県小諸市出身の漫画家。
1979年「ざしきわらし」でデビューし、青春群像劇からSF、ミステリー、
ミリタリーまで幅広いジャンルを手がける。

代表作には『軽井沢シンドローム』『我が名は狼』『GREY』
『NERVOUS BREAKDOWN』などがある。
独特の当て字や、シリアスとギャグを混在させる作風が特徴。

短編「W(ウォン)」は、ビリヤードという静かな競技を題材とした
異色の短編で、たがみ作品の中でも“余韻の残る一作”として位置づけられる。


読後に残るもの

派手さはない。
しかし、短編だからこそ成立する密度と静けさが心地よい。
読み返すたびに、ビリヤード台の上に落ちる
“音のない気配”だけが残るような作品だ。

最後のシーン、キューが手球を突く音が、静かに聞こえたような気がした。
その一打の余韻だけが、しばらく心に残っていた。


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