この記事は、有川浩(ひろ)著『図書館戦争』の魅力を、ネタバレ無しで紹介したものです。
日本図書館協会の公式宣言
図書館の自由に関する宣言
図書館は、基本的人権のつとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することを、もっとも重要な任務とする。
この任務を果たすため、図書館は次のことを確認し実施する。
- 図書館は資料収集の自由を有する。
- 図書館は資料提供の自由を有する。
- 図書館は利用者の秘密を守る。
- 図書館はすべての検閲に反対する。
図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。
(公益社団法人 日本図書館協会 より)
はじめに
前述した『日本図書館協会の公式宣言』は、実在するものである。
これは、戦後の図書館界が「二度と検閲を許さない」と誓った証でもある。
『図書館戦争』は、この宣言を土台にした物語だ。
ただし、少しだけ、ほんの少しだけ、武力闘争の気配を帯びている。
——もし、この宣言が“武力を伴っていたら”。
その仮定から静かに始まるのが、この作品である。

設定
■良化特務機関
メディア良化法のもと、法務省に置かれたメディア良化委員会。
各都道府県に設置されたのが、メディア良化委員会代執行組織である良化特務機関。
公序良俗に反する書籍・映像作品・音楽作品などを任意で取り締まる権限を持つ。
その強制力は警察に近く、図書隊とはしばしば武力衝突を起こす。
■図書隊
笠原 郁らが所属する組織。
図書館の自由を守るために武装した、防衛組織である。
図書隊は、図書館の中立性と利用者の自由を守るために設置された。
本来は図書館行政の一部でありながら、良化特務機関による強制的な検閲に対抗するため、
例外的に武装と防衛権限を認められている。
その立場は独特で、
- 軍隊ほどの規模や重武装は持たない
- しかし、訓練水準は高く、精鋭部隊としての側面を持つ
- 政治的には弱いが、理念の強さで組織が支えられている
という“強さと脆さ”が同居している。
図書館を守るという理念のもと、
図書館業務・防衛業務・後方支援の三つの職域が連携し、
日常の図書館運営から武力衝突までを担う、特殊な組織である。
■図書隊の階級
| 特等図書監 | 一等図書監 | 二等図書監|三等図書監 |
| 一等図書正 | 二等図書正|三等図書正 | |
| 図書士長 | 一等図書士 | 二等図書士|三等図書士 |
■図書隊の職域
図書隊は、図書館業務と防衛業務を併せ持つ、特殊な組織である。
| 職域 | 図書館員 | 防衛員 | 後方支援員 |
|---|---|---|---|
| 部署 | 図書館業務部 | 防衛部 | 後方支援部 |
| 主な業務 | 通常図書館業務 | 図書館防衛業務 | 蔵書の装備・物流一般 |
■登場人物
| 登場人物 | 階級 | 概要 |
|---|---|---|
| 笠原 郁(かさはら いく) | 一等図書士 | 高校時代に図書隊員に助けられ、その“王子様”に憧れて入隊。真っ直ぐで不器用。 |
| 堂上 篤(どうじょう あつし) | 二等図書正 | 厳しいが面倒見が良い。郁に雷を落としつつも、成長を見守る存在。 |
| 柴崎 麻子(しばざき あさこ) | 一等図書士 | 情報通で頭の回転が速い。表の顔と裏の顔を使い分ける。 |
| 手塚 光(てづか ひかり) | 一等図書士 | 真面目で努力家。堂上を尊敬するあまり、郁に対抗心を抱く。 |
| 小牧 幹久(こまき みきひさ) | 二等図書正 | 穏やかで冷静。堂上の良き相談相手。 |
| 玄田 竜助(げんだ りゅうすけ) | 三等図書監 | 豪快で頼れる存在。基地司令の右腕として部隊を支える。 |
映像化
アニメ
■TVアニメ『図書館戦争』(2008)
- 放送期間:2008年4月12日〜6月28日
- 話数:全12話+未放送1話
- 放送枠:フジテレビ「ノイタミナ」
- 制作:Production I.G
- 監督:浜名孝行
- シリーズ構成:古怒田健志
- キャラクターデザイン:中村悟
- 音楽:菅野祐悟
- 製作:図書館戦争製作委員会
- 主題歌:
- OP:高橋瞳「changes」
- ED:Base Ball Bear
主なキャスト
- 笠原 郁:井上麻里奈
- 堂上 篤:前野智昭
- 小牧 幹久:石田彰
- 手塚 光:鈴木達央
- 柴崎 麻子:沢城みゆき
- 玄田 竜助:鈴森勘司
実写
■映画『図書館戦争』(2013)
- 公開日:2013年4月27日
- 監督:佐藤信介
- 脚本:野木亜紀子
- 制作:セディックインターナショナル
- 配給:東宝
- 出演:
- 堂上 篤:岡田准一
- 笠原 郁:榮倉奈々
- 小牧 幹久:田中圭
- 手塚 光:福士蒼汰
- 柴崎 麻子:栗山千明
- 玄田 竜助:橋本じゅん
- 仁科 巌:石坂浩二
- 興行収入:17.2億円
- 内容:原作1巻を中心に、図書特殊部隊の訓練・初陣・小田原攻防戦を描く。
収録
- 一、図書館は資料収集の自由を有する。
- 二、図書館は資料提供の自由を有する。
- 三、図書館は利用者の秘密を守る。
- 四、図書館はすべての検閲に反対する。
- 図書館の自由が侵される時、我々は団結して、あくまで自由を守る。
- ジュエル・ボックス
書籍情報
■図書館戦争 図書館戦争シリーズ(1)
- 著者:有川 浩
- イラスト:徒花 スクモ
- 出版社:KADOKAWA(角川文庫)
- 発売日:2011年4月23日
- 判型:文庫判
- ページ数:404ページ
■シリーズ構成
- 図書館戦争(1) ← 今回の紹介
- 図書館内乱(2)
- 図書館危機(3)
- 図書館革命(4)
- 別冊図書館戦争 I(5)
- 別冊図書館戦争 II(6)
著者情報
有川 ひろ(ありかわ ひろ)
- 旧ペンネーム:有川 浩
■略歴
- 2004年、デビュー。
- 自衛隊を題材にした「自衛隊三部作」で注目を集める。
- 2006年、『図書館戦争』シリーズを刊行。
SF×ミリタリー×恋愛の独自ジャンルで大ヒット。 - 2019年、ペンネームを 「有川 浩」→「有川 ひろ」 に変更。
■代表作
- 『図書館戦争』シリーズ
- 『自衛隊三部作』(塩の街/空の中/海の底)
- 『阪急電車』
- 『空飛ぶ広報室』
- 『三匹のおっさん』
- 『県庁おもてなし課』
■作風
- SF・ミリタリー要素と、
“まっすぐな恋愛” を組み合わせた作風が特徴。 - ライトノベル的な読みやすさと、
一般文芸のテーマ性を併せ持つ。 - インタビューでは自身を「ライトノベル作家」と語っている。
まとめ
有川ひろ先生の作風は、まさに自分の好みの中心にある。
SF、ミリタリー、そして恋愛。
前回紹介した『空飛ぶ広報室』は、ミリタリー要素が控えめだったが、
『図書館戦争』はその要素がしっかりと物語の芯にある。
現実離れした設定を、ここまで自然にまとめ上げてしまう筆力に感嘆する。
それでいて重くならないのは、笠原 郁と堂上 篤の関係性が、
物語にやわらかな温度を与えているからだろう。
映画から入った本作だが、原作を読み進めるほどに、
岡田准一さんと榮倉奈々さんの配役が“しっくり来る”と感じた。
読み終えて、静かな図書館に久しぶりに足を運びたくなった。
もちろん、図書隊員はいないけれど、
本を守るという理念は、変わらずそこにある。
関連情報
有川浩(ひろ)の他の作品
→ 『空飛ぶ広報室』有川浩(ひろ)著|好きな作品の話
一つ前の好きな作品