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はじめに

戦艦はもう存在しない:現代の艦種分類と海上自衛隊の護衛艦を整理する

この記事は、戦艦という言葉のイメージと現代の艦艇の実態のズレを整理し、艦種の基礎を分かりやすくまとめたものです。



はじめに

戦艦から攻撃されることはない。
これは、平和ボケしているわけではない。
ただ、「戦艦」という艦種が現代にはすでに存在しない、という事実にあらためて気づいた。

「戦闘艦」という言い方はあるが、それを「戦艦」と言いかえることはない。
一般的な 軍艦のイメージ が、「戦艦」という言葉に残っているのだろうと推測する。

一方で、「フリゲート艦」「巡洋艦」などの艦種名を耳にすることはある。
しかし、その意味を細かく理解しているかと言われると、自分でも曖昧だった。
そこで、現代の艦種について一度整理してみることにした。

戦艦のイメージ写真。 戦艦のイメージ写真


■ 現代の主な艦種

まずは、現在の海軍で使われている代表的な艦種を整理する。

艦種 役割 特徴
駆逐艦(Destroyer) 防空・対潜・対艦の万能艦 現代海軍の主力。ミサイル搭載。
フリゲート(Frigate) 護衛・対潜 駆逐艦より小型。沿岸〜近海向け。
巡洋艦(Cruiser) 指揮・広域防空 大型でレーダー能力が高い。数は減少。
コルベット(Corvette) 沿岸防衛・哨戒 小型戦闘艦。対潜・対艦任務も。
空母(Carrier) 航空機運用 艦そのものより航空機が主役。
潜水艦(Submarine) 隠密行動・攻撃 水中からの攻撃・偵察。

こうして並べてみると、
「戦艦」という言葉が現代の分類には存在しないことがよく分かる。

■ 戦闘艦と補助艦という区分

艦種を理解するうえで、もうひとつ重要なのが
「戦闘艦」と「補助艦」という区分だ。

区分 内容
戦闘艦(Combatant) 戦うための艦 駆逐艦、フリゲート、巡洋艦、空母、潜水艦、コルベット
補助艦(Auxiliary) 戦闘を支える艦 補給艦、輸送艦、掃海艇、測量艦、病院船

一般語としての「軍艦」は、この両方をまとめた言い方だが、
専門的には役割で明確に分かれている。


■ 自衛隊に軍艦は存在しない

海上自衛隊の艦種は、すべて「護衛艦」と呼ばれている。
これは、戦後の自衛隊創設時に「軍艦」という言葉を避けるために作られた、日本独自の分類である。

ただし、国際的な艦種分類に当てはめると、護衛艦にもいくつかの種類がある。

護衛艦を国際分類に当てはめるとどうなるか

海自の護衛艦は、実質的には次のように分類できる。

海自の呼称 国際分類に近い艦種 代表例 備考
DDG(ミサイル護衛艦) 駆逐艦(Destroyer) こんごう型、あたご型、まや型 イージス艦を含む
DD(汎用護衛艦) 駆逐艦〜フリゲートの中間 むらさめ型、たかなみ型 実質は駆逐艦クラス
FFM(多用途護衛艦) フリゲート〜コルベット もがみ型 小型・省人化・多用途
DE(旧来の護衛艦) フリゲート あぶくま型 退役が進行中

つまり、

  • 海自の主力は「駆逐艦クラス」が多い
  • 近年は「フリゲート寄り(FFM)」が増えている

という構図になる。

海自で駆逐艦クラスが多い理由は、日本が海に囲まれた国であることに起因する。

  • 海上交通路(シーレーン)防衛が重要
  • 日本周辺は潜水艦の活動が多い海域である
  • 対潜・対空能力を両立した大型艦が必要

といった地政学的事情が背景にある。


■ 掃海艇という存在

自衛隊の艦艇に触れたついでに、もう一つ特徴的な存在である掃海艇についても触れておきたい。

補助艦の分類される中でも特徴的なのが掃海艇だ。
機雷を処理するため、かつては木造船体が一般的だった。

湾岸戦争後、日本が掃海艇を派遣した際、
「木造の古い船を送るのは恥ずかしい」という趣旨の発言が話題になったことがある。

しかし実際には、木造は古いからではなく磁気機雷対策のためであり、
掃海任務は非常に危険で高度な技術を要する。

艦種の役割が一般に知られていないからこそ生まれた誤解だろう。


■ 戦艦はもう存在しない

第二次世界大戦まで海戦の主役だった戦艦は、
航空機とミサイルの登場によって役割を失い、世界中で姿を消した。

アメリカ海軍が長くモスボール(保管)していたアイオワ級も、
すでにすべて退役し、博物館として保存されている。

つまり、現代において「戦艦から攻撃される」という状況は起こり得ない。


■ 一度は復活した戦艦

戦艦は第二次世界大戦後、航空機とミサイルの発達によって主役の座を失い、各国で次々と退役していった。
しかし、完全に姿を消したわけではなく、一度だけ“復活”した時期がある。

● 戦艦が消えた理由

  • 航空機の攻撃力が戦艦の防御力を上回った
  • ミサイルの登場により、遠距離からの精密攻撃が可能になった
  • 巨大で高価な戦艦より、柔軟な艦隊構成が求められるようになった

こうして戦艦は役割を失い、各国で退役が進んだ。

● モスボール(保管)という処置

アメリカ海軍は、戦艦をすぐに廃棄せず、モスボール(長期保管)という形で残した。
これは、再就役できるよう最低限の状態を保ちながら“眠らせる”方法である。

※モスボールとは

  • 艦艇を長期間使用しない状態で保管する方法
  • 湿度管理・防錆処置・開口部の封鎖などを行い、再就役できる状態を維持するもの
  • 動態保存に近いが、実際に動かすわけではない点が異なる。

● 再び呼び戻された戦艦

冷戦期、アメリカは戦力強化の一環として、アイオワ級戦艦を近代化して再就役させた。
- ミサイル搭載
- 電子装備の更新
- 乗員配置の見直し

こうして、旧来の大砲と現代兵器を併せ持つ“ハイブリッド戦艦”として短期間復活した。

● そして完全退役へ

その後、戦艦の役割は再び薄れ、
- 運用コストの高さ
- 乗員数の多さ
- 現代戦における脆弱性

などの理由から、モスボール保管も終了し、正式に退役した。
現在、戦艦は博物館として保存されるのみで、現役艦としての戦艦は世界に存在しない。


■ おわりに

戦艦という言葉は今でも強いイメージを持つが、
現代の海には戦艦という艦種は存在しない。

その代わり、
- 戦闘艦
- 補助艦
という役割の区分があり、
それぞれが現代の海上任務を支えている。

艦種の呼び方や役割は、一般にはあまり知られていない。
その一般の中には、一部の政治家も含まれる。
だからこそ、政治家の発言が専門知識のある人から指摘を受けることもある。
言葉のズレは自然なものだが、
こうして調べてみると、現代の艦艇の姿が少し見えてくる。


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