この記事は、国名の漢字表記の成り立ちと、無線で使われる読み替えの仕組みをまとめたものです。
疑問に感じた事
冬季オリンピックでの各選手の活躍がニュースを賑わせている。 日本人選手の活躍は、やはり嬉しいものだ。 新聞各紙でも結果が大きく取り上げられている中、ある表現が気になった。
アメリカは「米国」、イギリスは「英国」。 国名を漢字で表記する例はある。 すべての国に漢字が当てはめられているのだろうか。 そんな疑問が浮かんだので調べてみた。
国名の漢字表記の成り立ち
外国の国名を漢字で表記する文化は、明治から昭和初期にかけて広く使われていた。
当時はカタカナ表記がまだ一般的ではなく、新聞・外交文書・地図などで外国語を漢字に置き換える必要があったためだ。
国名の漢字表記には、いくつかのパターンがある。
1. 音を写した当て字
外国語の発音に近い音を、漢字の音読みで再現したもの。 例:
- America → 亜米利加
- France → 仏蘭西
- Germany → 独逸
意味よりも「音の近さ」を優先している。
2. 意味を写した当て字
発音ではなく、語の意味を漢字で表したもの。 例:
- Netherlands(低い土地)→ 和蘭(古称の「オランダ」から)
- Switzerland(連邦)→ 瑞西(瑞=めでたい・美しいの意を当てた説も)
音写と意味写が混ざるケースも多い。
3. 雰囲気・語感を重視した表記
必ずしも発音に忠実ではないが、語感やイメージを漢字で整えたもの。 例:
- 葡萄牙(ポルトガル)
- 西班牙(スペイン)
語源とは関係なく、音と雰囲気のバランスで選ばれている。
4. 略号としての漢字
戦後、当て字の多くは使われなくなったが、新聞略号として一部が残った。 例:
- 米(アメリカ)
- 英(イギリス)
- 仏(フランス)
- 独(ドイツ)
- 露(ロシア)
- 中(中国)
- 韓(韓国)
現在もっとも目にするのは、この略号のほう。
5. カタカナ表記への移行
戦後、教育・出版の標準化が進む中で、外国語の表記はカタカナに統一されていった。 その結果、漢字表記は歴史的な資料や新聞略号としてのみ残り、一般的な文章ではほとんど使われなくなった。
国名の漢字表記一覧をまとめてみた。
北米
| カタカナ | 漢字表記 | 使用頻度 |
|---|---|---|
| アメリカ | 亜米利加 | 〇 |
| カナダ | 加奈陀 | △ |
| メキシコ | 墨西哥 | △ |
中南米
| カタカナ | 漢字表記 | 使用頻度 |
|---|---|---|
| ブラジル | 伯剌西爾 | △ |
| アルゼンチン | 亜爾然丁 | △ |
| チリ | 智利 | △ |
| ペルー | 秘露 | △ |
| コロンビア | 哥倫比亜 | △ |
| キューバ | 玖馬 | △ |
欧州
| カタカナ | 漢字表記 | 使用頻度 |
|---|---|---|
| イギリス | 英吉利 | 〇 |
| フランス | 仏蘭西 | 〇 |
| ドイツ | 独逸 | 〇 |
| イタリア | 伊太利亜 | 〇 |
| スペイン | 西班牙 | △ |
| ポルトガル | 葡萄牙 | △ |
| ロシア | 露西亜 | 〇 |
| オランダ | 和蘭 | △ |
| スイス | 瑞西 | △ |
| スウェーデン | 瑞典 | △ |
| ノルウェー | 諾威 | △ |
| デンマーク | 丁抹 | △ |
| フィンランド | 芬蘭 | △ |
| ギリシャ | 希臘 | △ |
アジア
| カタカナ | 漢字表記 | 使用頻度 |
|---|---|---|
| 中国 | 中国 | 〇 |
| 韓国 | 韓国 | 〇 |
| 北朝鮮 | 朝鮮 | 〇 |
| 台湾 | 台湾 | 〇 |
| 香港 | 香港 | 〇 |
| インド | 印度 | △ |
| インドネシア | 印度尼西亜 | △ |
| タイ | 泰 | △ |
| ベトナム | 越南 | △ |
| マレーシア | 馬来西亜 | △ |
| シンガポール | 新嘉坡 | △ |
| フィリピン | 比律賓 | △ |
中東
| カタカナ | 漢字表記 | 使用頻度 |
|---|---|---|
| トルコ | 土耳古 | △ |
| サウジアラビア | 沙特阿拉伯 | △ |
| イラン | 伊朗 | △ |
| イラク | 伊拉克 | △ |
アフリカ
| カタカナ | 漢字表記 | 使用頻度 |
|---|---|---|
| エジプト | 埃及 | △ |
| 南アフリカ | 南阿弗利加 | △ |
| ケニア | 肯尼亜 | △ |
| ナイジェリア | 尼日利亜 | △ |
オセアニア
| カタカナ | 漢字表記 | 使用頻度 |
|---|---|---|
| オーストラリア | 濠太剌利 | △ |
| ニュージーランド | 新西蘭 | △ |
ほとんど使用されなくなった漢字表記だが、三種類もの命名方法があることを初めて知った。
これ、漢字の読み取りテストをされても、分からない国ばかりである。
この漢字の当て字と同じように、アルファベットや数字にも、別の呼び方がある。
無線など、ノイズが多い現場で使われていたもので、現在でもその現場では当たり前に使用されている。
アルファベットの読み方一覧(NATOフォネティックコード)
無線通信で使われる、聞き間違いを防ぐための読み替え。 航空・船舶・軍・警察など、現在でも広く使われている。
| 文字 | 読み方(英語) | 読み方(カタカナ) |
|---|---|---|
| A | Alpha | アルファ |
| B | Bravo | ブラボー |
| C | Charlie | チャーリー |
| D | Delta | デルタ |
| E | Echo | エコー |
| F | Foxtrot | フォックストロット |
| G | Golf | ゴルフ |
| H | Hotel | ホテル |
| I | India | インディア |
| J | Juliet | ジュリエット |
| K | Kilo | キロ |
| L | Lima | リマ |
| M | Mike | マイク |
| N | November | ノーベンバー |
| O | Oscar | オスカー |
| P | Papa | パパ |
| Q | Quebec | ケベック |
| R | Romeo | ロメオ |
| S | Sierra | シエラ |
| T | Tango | タンゴ |
| U | Uniform | ユニフォーム |
| V | Victor | ビクター |
| W | Whiskey | ウイスキー |
| X | X-ray | エックスレイ |
| Y | Yankee | ヤンキー |
| Z | Zulu | ズールー |
こんな形で使用される。 Control, this is Alpha-Bravo-One. (コントロール、こちらアルファ・ブラボー・ワン)
Sierra-Tango-Three, do you copy? (シエラ・タンゴ・スリー、聞こえますか)
実社会で使う事はあるか? 名前やファイル名等伝えるのに使えそうだ。
例えば、名前を使う場合。 My name is Sato. That's Sierra–Alpha–Tango–Oscar. (私の名前はSATOです。シエラ、アルファ、タンゴ、オスカー)
スペルミスはなくなる。ちょっと使ってみたい気もする。
数字の読み替え一覧(無線)
無線では、数字も聞き間違いが起きやすいため、 通常の発音よりも明瞭で誤認しにくい読み方 が使われる。
| 数字 | 読み方(英語) | 読み方(カタカナ) |
|---|---|---|
| 0 | Zero | ゼロ(または「マル」) |
| 1 | One | ワン |
| 2 | Two | ツー |
| 3 | Three | スリー |
| 4 | Four | フォー |
| 5 | Five | ファイブ |
| 6 | Six | シックス |
| 7 | Seven | セブン |
| 8 | Eight | エイト |
| 9 | Nine | ナイン |
この方式で、時刻を伝えてみる。
時刻の読み方(無線)
無線では、時刻を読み上げるときも 数字を一つずつ区切って読む のが基本。 特に航空無線では 24 時間制を使い、00〜23 時をそのまま読み替える。
基本ルール
- 24 時間制 で読む
- 数字は 1 桁ずつ 読む
- 「00」は ゼロゼロ
- 「09」は ゼロナイン
- 分も同じく 2 桁で読む(例:45 → フォーファイブ)
時刻の読み方一覧
| 表記 | 読み方(英語) | 読み方(カタカナ) |
|---|---|---|
| 00:00 | Zero Zero Zero Zero | ゼロ・ゼロ、ゼロ・ゼロ |
| 01:15 | Zero One One Five | ゼロ・ワン、ワン・ファイブ |
| 09:30 | Zero Nine Three Zero | ゼロ・ナイン、スリー・ゼロ |
| 12:00 | One Two Zero Zero | ワン・ツー、ゼロ・ゼロ |
| 18:45 | One Eight Four Five | ワン・エイト、フォー・ファイブ |
| 23:59 | Two Three Five Nine | ツー・スリー、ファイブ・ナイン |
※ 航空無線では「Nine」を Niner(ナイナー) と発音することもある。
ドラマや映画の中、航空無線・軍事系・警察消防系のシーン等でも使われる。
このあたり、使ってみたい気持ちと、白い目で見られそうだと思う気持ちが半々である。
例えば、「HAT(はっと)で17時半に会おう」と伝えるとする。 その会話を脇で聞いていると、あらぬ誤解を生みそうである。
しかもこの会話、協力者(相手)が理解しないと成り立たない。 そう思うと、試してみるのは少し難しい。